鞄に入れたい次の本

読書が好きな大学生の備忘録。週に二、三回更新できれば御の字。今の自分に追いつくまでは読んだ時系列めちゃくちゃです。

眠りから復帰

 

お久しぶりです。

 

ちょっと忙しくなっただけで目標の週2投稿が出来なてなかった点、自分の弱さが早速出てしまいました。

 

1週間何をやってたかですが、何か読書好きの人為に新しいサービスを作れやしないかと思考を巡らせていました。

 

現時点で「読書メーター」や「ブクログ」などのサービスがある中で、それ以上に愛読家達を結びつけられるものができないかなぁと。

 

結論今は必要性や新規性のある物が何も思い付かずに断念してしまったのですが…

 

以前の投稿で読書は「自分との対話」であるという話を偉そうに語ったと思います。この考えはそのまま、自分と対話ができるのであればその結果を面白い形で発信できれば更に広がるなと考えています。理想として掲げていたのは「読書を通して人を知る」事のできるサービスこれは自分自身も含めてです。

 

とはいえ、読書の先に何があればより読書生活が色づくのかが中々見えてこないのです。読む事で十分と思う自分もいれば、内容や感想を語り合いたいと思う自分もいる。でもその先に何か新しい満足感や楽しみを作れるのか。

 

暫く悶々としながら過ごす事になりそうです。

 

書評:インパール

 

著者:高木俊朗

出版社:文春文庫

 

 長い間本棚に眠っていた作品です。買った当初はあまりにも漢字と知らない地名が多すぎて、あまり読み進める気が起こらなかったので、いつか読まないとなと思いつつ逃げてました(笑)他の作者さんの作品で太平洋戦争をテーマにした作品がちらほらでてきて、思い出されたので久しぶりに手に取って読むことになりました。

 

概要

 太平洋戦争・最も無謀であるとされ、最も悲惨な結果に終わった「インパール作戦」。作戦に参加した師団や、当時の上層部の人物が実名で綴られています。史実を元に構成された話の上に、著者の調査により色付けされ描かれたそれぞれの人物像が克明に語られています。

 己の名声と日本国の戦力の課題評価の為、どうしても作戦実行に固執した”小東條”、牟田口司令官。その元で作戦に対し異を立てながらも実行せざるを得なかった柳田師団らの実行部隊。悲劇の作戦は、多くの死をいたずらに巻き込みながら進行していきます。

 作戦失敗後、上層部は各々の失態を隠蔽しようと記録をねじ曲げ始めます。本作品で暴かれる実情と将達の人間性は必読です。

 

感想

 内容はとてもわかりやすく凄惨さと無情さにはとても現実味がある作品でした。勿論太平洋戦争の話で結果は周知の事実ですが、裏側の話は初めて読みました。

  己の名声の為に無謀な作戦を推し進めたとも取れる上層部には非常に強い憤りを覚えながら読み進めていました。あまりにも人の命が軽く扱われ、一人一人が数としてしか扱われない当時の現状は悲惨の一言ではとても語り尽くせません。上層部にも「日本国の為」という想いがあった事はわかりますが、おそらく「日本国の為」以上に「自分の武功の為」を優先してしまっていたのでしょう。もし最終目標の「日本国の為」を意識できていたら、無益な戦闘はここまで起こらず多くの命が助かったことでしょう。そして、あるいは戦争行為の愚かさにきずいた人々がより強く反戦を訴えて状況が変わっていたかと思うと、歯痒さも感じられました。

 よく聞く話ですが、兵隊は勇猛であることが望ましく、将は慎重であることが望ましいと言います。(言い方は違うかもしれませんが)そういった意味で言うと、「インパール作戦」携わった上層部は気概や神の力を頼り、自分たちの実力を過信していました。そこから慢心が生まれ、連合国の航空部隊を過小評価してしまったり、数少ない現実的な忠言者の柳田師団長に耳をかさず破滅の道へと走っていきました。自業自得と言うにはあまりにも多くの犠牲を払い過ぎです。過去の戦争や歴史から、彼ら自身は何を学んできたのか甚だ疑問で仕方がなかったです。

 この作品から学ぶべき事は実に多いのではないでしょうか。当たり前ですが、戦争という悲劇を繰り返してはいけない事。怨恨孕んだ争いからは、新たな怨恨が生まれるだけというのは人生の歴史を振り返っても自明の事です。また他の暴力行為、昨今でいうアメリカのイラク侵攻であり、ベトナム戦争は何も正の生産性はありませんでした。様々な技術や知見を得た我々人類は、それを暴力行為に注ぎ込むのではなくいかに平和的な解決をできるかに注ぎ込むべきなのです。

 そして、現代を生きる我々は過去の多大なる犠牲の元に生活を享受している事も一つです。ある意味我々の生活は戦時中の多大なる犠牲なくして成立し得ません。当時の戦争の反省が残っているからこそ、我々は平和的に物事を解決できるように動いているといっても過言ではないのではないでしょうか。他にも、私利に固執する事の愚かさや思考放棄という行為の恐ろしさも常に忘れてはいけないこととして、心に知らしめ続けるべきだと感じさせてくれました。

 

(読了日2020・5・12)

 

表紙画像https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/61OoB9i022L.jpgから引用

 

書評:サロメ

著者:原田マハ

出版社:文藝春秋

 

 またまた原田さんの作品です。最近影響受けすぎて、西洋画や西洋美術史もちょっと勉強しようと思い立ったくらいです。大学生の間は美術館もただで入れるので(常設展は)、学生最後の年にそういった恩恵も受けとこうという貧乏人根性もあります。笑

 さて「サロメ」についてなのですが、戯曲なんですね。相変わらず無知な自分なので、今回も読み進めながらいろいろ調べたりメモったり勉強しながらの読書になりました。ただ著者の文体や構成にも慣れてきたので、非常に楽しく読み進められた作品です。どぞ。

 

あらすじ

 物語はロンドンに住む中流階級の女性、メイベル・ビアズリーの視点で語られます。彼女には結核を煩い、病床にありながらも絵を描くことにおいてはとても優れた才能を持つ弟がいました。その弟の名前は、オーブリー・ビアズリー、のちに戯曲「サロメ」の挿絵で時代に爪痕を残すことになる画家です。

 オーブリーは姉メイベルの力添えもあり、当時世間を風靡していた戯曲作家のオスカー・ワイルドと出会います。ワイルドはオーブリーの才能を見抜き、次第に二人で仕事をこなすようになっていきます。そして姉のメイベルは、そこに官能的で危ない匂いを孕んだ関係性の存在を感じ取り、弟をワイルドから引き剥がそうと試みるのですが... 

 

感想

 まるで劇を観たかのような気分になり、とても面白かったです。体感的には、戯曲「サロメ」をなぞったなという気持ちを抱きました。「未必のマクベス」で早瀬さんが「マクベス」を下絵にしたように「サロメ」が下絵にされていたんだなという作品でした。(タイトル的にそうやんとかではなく)ただこの物語では作品の展開よりも挿絵や人物像に焦点が当たっていたので、読み進めていく中で、”実はこの物語自体がサロメやん!”とようやく気づいたいう感じで、割とトリッキーでした。その分、終盤の展開が怒涛で一気に読み切ってしまいました。

 

 冒頭と最後では、それぞれの登場人物へ抱く感情がガラッと変わりました。最初は、病弱な弟オーブリー、献身的な姉のメイベル、周囲の人間を顧みない悪童ワイルドといった感じでしたが、途中からメイベルが止まらなくなります。そして物語が献身的に弟を支える女性の物語から、メイベルを中心とした「サロメ」へと変貌を遂げていきました。異常に弟を可愛がるメイベルの、弟の心を掴むワイルドへの嫉妬なのか、最高峰の領域で芸術と向き合う二人への嫉妬が原因なのか、それとも純粋に弟を守りたいのか、とにかく彼女が恐ろしくなってくる。ダグラスとの出会いで変わり始めた彼女こそが<運命の女:サロメ>だったのだと確信したのは喀血したオーブリーの血を口に含んだときの表現でした。それ以降は急速に、かつ確実にメイベルの存在が、<サロメ>と重なっていくようでした。

 作品の仕掛けに気づいた時は鳥肌ものでした。メイベルがサロメなら、いったいヨカナーンは誰なのか、ヘロデ王は、ヘロディアは、といった感じで急にエンジン全開で頭の回転を巡らせていました。最後の章は全てがサロメの如く美しく収まってしまったといった感じでしょうか。”この物語の主人公はオーブリーでもなければ、ワイルドでもない、私なのだ”というメイベルの心の中の声が聞こえてくるようでした。後から思うと物語の中で一番の地獄を経験したのはメイベルだったのかもしれませんね。病弱の弟の為に体を使ってまで支えようとしたのに、当人は姉の忠告も聞かずにワイルドにゾッコンになってしまう訳なので。

 

 シーンが変わる度に挟まれる黒の見開きも良い仕掛けだなと思いました。最初は、何度も描写されるヨカネーンの黒い血を表しているのかなと思っていました。ただ読み終わって改めて考えると、あれは「地獄」を意味していたのかもと思います。芸術を志す彼らからしたら、地獄とは全てが無になってしまう場所のことを指すのではないかと、視覚も聴覚も及ばない無の世界が彼らにとっての地獄。そしてシーンが移り変わる時も、登場人物の誰かしらが困惑に囚われて頭の中が真っ白に(この場合真っ黒ですが)なる様子をも表していたではないでしょうか。深読みのしすぎかもしれないですが、僕自身地獄が存在するとしたら”永遠に続く闇”だと考えているので割といい線かなとも思ったりしています。

 

 全体的に今まで読んだ原田さんの作品とはちょっと違うなぁとも思いました。今までの三作は取り扱っていたのが画家と絵画の作品その物で、物語には著者の想像力が入り込む余地が大いにあり(というかほぼ創造しないと結びつかないので)非常に魅力的だったのですが、今回は「サロメ」に寄せようと囚われてしまったんじゃない感を垣間見た気がしました。とはいっても、著者が書いた作品の順番的にこの作品が初期の方なので、”前のに比べて〜”というのはお門違いなのですが。

 

 何はともあれ、戯曲「サロメ」も見てみないと...

 

(読了日2020・5・9)

 

表紙画像https://b-bunshun.ismcdn.jp/mwimgs/8/8/480/img_8892a7dc8e4e22d31bf0e96db89a4eac578813.jpgから引用

 

書評:私という運命について

 

著者:白石一文

出版社:角川文庫

 

 今日は白石一文さん著の作品をご紹介。5月8日に文庫の「もしも、私があなただったら 」が再版で販売になったので、久しぶりに白石さんの作品読みたいなと思ってた中でブックオフで出会ったやつですね。毎度毎度ですが、白石さんの作品って独特なタイトルしてますよね。

 

あらすじ

  物語は冬木亜紀という女性の視点で語られていきます。幾章かなら作品を通して、彼女は「出会い」「別れ」「結婚」「身近な人の死」を経験しながら、自身の人生についての価値を問いかけていきます。

 最初の章では、かつての恋人である佐藤康の結婚式に招待された彼女が康からある忠告を受ける形で話が動き出します。その後も弟夫婦の存在、自らの新天地での恋人、そこで知り合った年下の女の子との交流が彼女の人生に影響を与えていきます。そして終章に向かうにつれて、彼女の選択はある答えを導き出しことになります。

 

感想

 結構な読み応えのある長編でした。白石さんの作品は毎回毎回、自分の心もえぐられるような気持ちになるのである程度そんな覚悟はしながら読んでいました。そして案の定、物語の分岐点では本を読む手が止まり、「自分はこの文を読んで、何を思っているのか。自分ならどう考えるか。」となる機会が多々ありました。

 

「人間は、愛する人の人生に寄り添うことはできても、その人の命に介入することはできない」という言葉がとても印象的でした。割とこんなこと自分も考えているなあと思いましたね。結局、人が誰かの代わりに生まれ誰かの代わりに死ぬことが不可能である以上、生死の瞬間には一人で立ち向かう強さが必要になるのはおっしゃる通り。そして上の台詞を肯定的に捉えるのであれば、人間は愛する人の人生に寄り添うことならできるのだから精一杯寄り添うべきだという風に思いました。

 また同様に「選べなかった未来と選ばなかった未来など存在しない」というのも、当たり前といえば当たり前ですがいい文言だなと。常に自分の選択で未来は作られていくもの、であれば「もし」の話をするのではなく、その瞬間を最良の物にすべく努力するしかないのだと。たまに考えることではあれど、こうやって文章で読むと再確認できますよね。とてもいい。

 

 ストーリーに関しては、登場人物が人生の中で波乱に満ちた出来事に苛まれていきます。亜紀が都合良すぎる感じも多少ありましたが、最後の康は死なないで欲しかったですね。白馬のフラグがあった時点で死んでしまうんだろうなぁとは思っていましたが、癌から復活したのになんで..という悲しさであふれました。

 

 男性が書いた女性の人生についての作品で、「女性の人生の価値」といった内容に焦点が置かれているので好ましく思わない人もいるとは思います。まして作中では、女性が男性を否応なく振り回すかのような描写もあるので...しかし逆に男性の作者だからこそ書ける内容でもあるなとも感じました。個人的には、男女がお互いのことを理解し切ることなんて不可能だと思っているので、そもそもよくこんな内容書けるなといった思いでいっぱいです。(女の勘と言われるやつも男がきっと永遠に理解できないものの一つだと思います)

 運命を受け入れるとは、そもそも運命という物が存在するのか、考えを廻らせながら読んだ作品でした。

 

(読了日2020・5・8)

 

表紙画像https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41iuAMSMTbL.jpgから引用

今週の仕入れ

 こんばんは。段々と暖かい日が増えてきましたね。天候が不安定な日が多いのも夏が近い証拠だなと思って過ごしている今日この頃です。大学もようやく研究室が動き始め、この読書に入り浸れる日々も終わりが近いのかなと思うと不謹慎ですが少々残念にも感じられます。

 

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 今日はまた本を仕入れに行って参りました。このラインナップから、原田マハさんにハマっている真っ最中である事が伝わると思います笑(バンクシーはもともと興味あったんであれなんですけど...)

 

 後は、就活において某商社のお方が述べていた「トップレフト」、最近文庫化された「銀河鉄道の父」、そして何故か読んでいなかった島本理生さんの「ナラタージュ」です。

 

 こちらも随時感想あげていきます。