鞄に入れたい次の本

読書が好きな大学生の備忘録。週に二、三回更新できれば御の字。今の自分に追いつくまでは読んだ時系列めちゃくちゃです。

書評:私という運命について

 

著者:白石一文

出版社:角川文庫

 

 今日は白石一文さん著の作品をご紹介。5月8日に文庫の「もしも、私があなただったら 」が再版で販売になったので、久しぶりに白石さんの作品読みたいなと思ってた中でブックオフで出会ったやつですね。毎度毎度ですが、白石さんの作品って独特なタイトルしてますよね。

 

あらすじ

  物語は冬木亜紀という女性の視点で語られていきます。幾章かなら作品を通して、彼女は「出会い」「別れ」「結婚」「身近な人の死」を経験しながら、自身の人生についての価値を問いかけていきます。

 最初の章では、かつての恋人である佐藤康の結婚式に招待された彼女が康からある忠告を受ける形で話が動き出します。その後も弟夫婦の存在、自らの新天地での恋人、そこで知り合った年下の女の子との交流が彼女の人生に影響を与えていきます。そして終章に向かうにつれて、彼女の選択はある答えを導き出しことになります。

 

感想

 結構な読み応えのある長編でした。白石さんの作品は毎回毎回、自分の心もえぐられるような気持ちになるのである程度そんな覚悟はしながら読んでいました。そして案の定、物語の分岐点では本を読む手が止まり、「自分はこの文を読んで、何を思っているのか。自分ならどう考えるか。」となる機会が多々ありました。

 

「人間は、愛する人の人生に寄り添うことはできても、その人の命に介入することはできない」という言葉がとても印象的でした。割とこんなこと自分も考えているなあと思いましたね。結局、人が誰かの代わりに生まれ誰かの代わりに死ぬことが不可能である以上、生死の瞬間には一人で立ち向かう強さが必要になるのはおっしゃる通り。そして上の台詞を肯定的に捉えるのであれば、人間は愛する人の人生に寄り添うことならできるのだから精一杯寄り添うべきだという風に思いました。

 また同様に「選べなかった未来と選ばなかった未来など存在しない」というのも、当たり前といえば当たり前ですがいい文言だなと。常に自分の選択で未来は作られていくもの、であれば「もし」の話をするのではなく、その瞬間を最良の物にすべく努力するしかないのだと。たまに考えることではあれど、こうやって文章で読むと再確認できますよね。とてもいい。

 

 ストーリーに関しては、登場人物が人生の中で波乱に満ちた出来事に苛まれていきます。亜紀が都合良すぎる感じも多少ありましたが、最後の康は死なないで欲しかったですね。白馬のフラグがあった時点で死んでしまうんだろうなぁとは思っていましたが、癌から復活したのになんで..という悲しさであふれました。

 

 男性が書いた女性の人生についての作品で、「女性の人生の価値」といった内容に焦点が置かれているので好ましく思わない人もいるとは思います。まして作中では、女性が男性を否応なく振り回すかのような描写もあるので...しかし逆に男性の作者だからこそ書ける内容でもあるなとも感じました。個人的には、男女がお互いのことを理解し切ることなんて不可能だと思っているので、そもそもよくこんな内容書けるなといった思いでいっぱいです。(女の勘と言われるやつも男がきっと永遠に理解できないものの一つだと思います)

 運命を受け入れるとは、そもそも運命という物が存在するのか、考えを廻らせながら読んだ作品でした。

 

(読了日2020・5・8)

 

表紙画像https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41iuAMSMTbL.jpgから引用